高断熱住宅を売り文句にして、「うちの会社は断熱にこだわっている!!」とアピールしている会社が目立ちますが、それって、本当に他社と差があるのでしょうか??
寒くない家に住みたいならば、住宅の断熱性能はもちろん大切ですが、暖房器具をどうするのかも重要ですよね?
そんなあなたに質問です。
床暖房は高級品だと思っていませんか?
そんなことないです。
住宅断熱の正しい考え方と、床暖房のメリットを解説していきます。
目次
■住宅断熱の正しい考え方
・住宅断熱の間違い
・住宅断熱を検討するときの「正しい順番」
■床暖房のすすめ
■シーリングファンについて
■住宅断熱の正しい考え方
・住宅断熱の間違い
北海道の壁の断熱の基準は「熱貫流率:約0.24W/(㎡k)」です。
・充填断熱に「グラスウール105mm」
・付加断熱に「ウレタンフォームなどを25mm」
これが基本なのですが、
この基本の数字を満たしているから高断熱住宅だってアピールしている会社が、実は山ほどあります。
いやいや、それが普通ですからね。
この断熱基準以下の施工をしている北海道の会社なんてあるのでしょうか?
もし、この断熱基準以下があったなら、その会社がヤバいだけです。
ちなみに、「熱貫流率:約0.19W/(㎡k)」基準にしている会社もあります。
・充填断熱に「グラスウール105mm」
・付加断熱に「ウレタンフォームなど50mm」
(※断熱性能が高いほど、熱貫流率の数値は小さくなります。)
付加断熱材の厚さが基準値の倍です。すごそうですよね?
良さそうですよね??
ウレタンフォーム25mmではなく50mmですよ???
全くとは言いませんが、断熱材を厚くしても実はあんまり効果はないです。
なぜかと言うと、壁の断熱性能を上げても窓から大量の冷気が入ってくるからです。
北海道の窓は樹脂サッシlow-eペアガラスが基本です。
「熱貫流率:約1.34W/(㎡k)」
熱貫流率を比較してください。
(※断熱性能が高いほど、熱貫流率の数値は小さくなります。)
先述の壁の熱貫流率と、窓の熱貫流率は全然違いますよね?
「壁の熱貫流率0.24 or 0.19W/(㎡k)< 窓の熱貫流率1.34W/(㎡k)」
実は壁の断熱性能を上げても、あんまり効果がないことが分かるでしょう。
住宅断熱を上げるためには窓の性能を上げれば良いのです。
樹脂サッシ真空トリプルガラス「熱貫流率は約0.99W/(㎡k)」とか
木製サッシ真空トリプルガラス(熱貫流率は上記よりもさらに下がります。)などがあります。
何故、壁の断熱性能をアピールする住宅会社が多いのでしょうか?
それはコストが安いからです。
壁の付加断熱(ウレタンフォームなど)の量を倍にして増えるコストは、せいぜい15万円程度ですが、全ての窓を樹脂サッシ真空トリプルガラスに変えて増えるコストは、窓のサイズや数量によりますが100万円以上かかります。
だから高断熱住宅をアピールするときに、壁の断熱を「標準です。」とアピールしているのでしょう。
樹脂トリプルガラスも、たまにアピールしている住宅会社もありますが、(オプション)なんて書いていたりします。
・住宅断熱を検討するときの「正しい順番」
住宅断熱を考えるときに、予算も含めて優先順位をつけること、順番を誤らないことがとても大事です。
1. まずは北海道の断熱基準を満たしているか確認する。
・充填断熱に「グラスウール105mm」
・付加断熱に「ウレタンフォームなどを25mm」
・樹脂サッシlow-eペアガラス
予算がまだあるのなら↓
2. LDKなどのメインの部屋、大きい窓を樹脂サッシ真空トリプルガラスにする。
予算がまだまだあるのなら↓
3. 住宅全体を樹脂サッシ真空トリプルガラスにする。
木製サッシ真空トリプルガラスも合わせて考える。
(木製サッシは、とてもカッコいいですがコストアップもケタ違いです。)
ここまで断熱にこだわったら↓
4. 壁の断熱を追加する。
この順番で考えてください。
1. 断熱が基準を満たしているか確認→
2. できる限り窓の断熱性を高める→
3. とことん窓の断熱性にこだわる→
4. 最後に壁の断熱を追加する
僕が住宅設計するとき、付加断熱を25mmにしたり30mmにしたり、コロコロ変更しますが、それは細かい設計上の納まりの調整でやっています。
断熱性能のために数ミリ変更したところで、あまり意味がないです。
■床暖房のすすめ。
北海道の多くの新築住宅の暖房器具はパネルヒーターを使っています。
それは、費用が安いからでしょう。
しかし、窓下などに置かれ邪魔だったり、ほこりが溜まったり、
何より見た目がかっこ悪い。
さらに室温が安定しなかったり、部屋によって室温のばらつきが出たりします。
それを床暖房にすれば、デメリットがすべて解消されますよ。
従来の床暖房は床暖房パネルが使われます。
図にあるように構造用合板の上に床暖房パネルが置かれ、その上に床暖用フローリングが置かれます。
上図(内側)のオレンジ色の部分が断熱空間です。
この場合、床の断熱材は大引きの間に入れられることが多く、床下は非断熱空間になります。
この床暖房パネルが大幅なコストアップになり、
さらに床暖用フローリングでコストアップになり、
結果、驚くほど高い金額になり…。
床暖房は高級品のイメージが定着しています。
ですが、床暖房は工法によって高価になる場合と、安く仕上げられる場合があります。
僕が設計した住宅の床暖房は、大引の下に床暖房用パイプを縛り付けています。
もともとは土間の床暖房に使われているパイプです。
このパイプが実はとても安い。
床暖用フローリングはどうしても必要ですが、
床暖用パイプ+床暖用フローリングを採用した場合のコストは
一般的なパネルヒーター暖房の場合と比べ(面積や熱源によって多少変わりますが)ほぼ同じ金額か若干高くなるくらいです。
上図の(内側)と(床下)のオレンジ色の部分が断熱空間です。床の断熱材は基礎断熱を使います。
だったら床暖房の方が良くないですか?
床暖房は24時間つけっぱなしです。
寒い家に帰ってくるってこと自体なくなります。
熱源の計画をしっかり考えていれば、暖房費が高いなんてこともないです。
この床暖パイプ縛り付けシステムはパネル型システムと比べてデメリットもなく、
北海道で徐々に広がってきているシステムです。
この方法で施工しない会社は、ただ知識がないだけです。
是非、北海道で新築住宅を考える際は検討している会社にこの床暖パイプ縛り付けシステムについて聞いてみてください。
知識があれば、おすすめしてくるはずです。
知識がなくても「設備会社に聞いてみます。」などの回答の会社は前向きに知識をつけようとしている会社です。
うちはそれはやりませんとか、適当に誤魔化す会社は…契約考えたほうが良いでしょう。
■シーリングファンについて
僕が「吹き抜けがある住宅」をおすすめしていて、さらに床暖房をおすすめしていると
多くの人が「シーリングファン必要だよね?」と聞いてきます。
はっきり言います。「必要ありません」
シーリングファンは暖房効果を上げるために
必要だと思っている人が多数います。
「吹き抜けはいる?いらない?」の記事に吹き抜け住宅のおすすめ理由について書いていますので参考にしてください。
「コールドドラフト現象で体調を悪くする」なんてニュースが問題になったからでしょうか。
・北海道基準の断熱性能を確保し
・床暖房で下から部屋を暖め
・吹き抜けを通じ2階から古い空気を排出する
というシステムをしっかり検討すれば
むしろシーリングファンは空気に変な動きを加えるので、デメリットだと言っても良いでしょう。
せっかく新築住宅を建てるなら経済的で寒くない家にしましょう。
笠井啓介
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