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梁見せ天井と省令準耐火構造の関係

打ち合わせをしていると「梁見せ天井(梁現し天井)に憧れている!」という人がとても多くいます。

 

梁は通常、天井材で隠されて見えなくなりますが、敢えて天井材を付けず梁をむき出しにして見せるのが「梁見せ天井」です。

 

梁見せ天井はとても人気がありますが、「防火性能」のことも知っておく必要があります。

梁は建築の重要な構造部分です。天井材はその梁を守る防火の役割もあります。

建物を建てる時には法律などで定められた、一定の性能を満たしていないと建てることができません。

梁見せ天井の住宅を建てる際には、「建築基準法(最低限守るべき法律)」の他に「省令準耐火構造(住宅金融支援機構で独自に決めた性能の基準)」のことを考えなくてはいけません。

ややこしいですね。

 

今回は、みんな大好きな「梁見せ天井」と、よく知られていない「省令準耐火構造」、この2つの関係について解説します。

 

 


目次

 

■省令準耐火構造とは。

 

■梁見せ天井のメリット。

 

■梁見せ天井も省令準耐火構造も。

 

 


■省令準耐火構造とは。

省令準耐火構造とはフラット35などの住宅ローン提供元でもある住宅金融支援機構が定めた防火性能が高い住宅の基準です。

建築基準法の耐火構造とは別物です。

 

この基準について簡単に説明すると、

 

・外部からの延焼防止

外壁、軒裏、屋根を基準の不燃材を使用する。

 

・各室防火

壁,天井を基準の石膏ボードで覆う。

 

・他室への延焼遅延

天井内部の壁まで基準の石膏ボードを延ばし,他の部屋に火災が広がらないための、ファイヤーストップ材を付ける。

 

の3つです。

 

この3つの基準を満たすと保険会社や契約プランにもよりますが、

火災保険が半額くらいになります。地震保険料も割引が適用されます。

ちなみに火災保険の木造一戸建ての中にはH構造とT構造があり、省令準耐火構造は「T構造」に分類されます。

住宅ローンの項目にあるので覚えておくと非常に便利です。

さらに住宅ローン、フラット35の条件になっていることが多いので確認が必要になります。

 

ただし、省令準耐火構造を満たしていなくとも35年の住宅ローンが受けられないわけではありません。

 

ハウスメーカーや工務店の多くは省令準耐火構造が標準仕様になっています。

省令準耐火構造を売りにしている広告をたまに見ますが、これが平均的な仕様です。

 

ここでやっと「梁見せ天井」との関係ですが、構造梁をそのまま見せる天井は省令準耐火構造の「各室防火の壁天井を基準の石膏ボードで覆う」に適合しないため省令準耐火構造にはならず火災保険、住宅ローンでデメリットが生じます。

 

つまり構造の梁を見せるデザインは平均的な仕様だとできません。

細かい調整やテクニックが必要になります。

 

 

■梁見せ天井のメリット。

お世話になった建築家、井上武久さんの自邸の写真です。

木の豊かさを感じる空間です。

 

お世話になっている「白田建築事務所さん」の作品です。

構造梁とシナベニアの天井がアクセントになっています。

 

 

「梁見せ天井」のデメリットは上記の通りですが、もちろんメリットも多くあります。

「梁見せ天井」に憧れる人の多くは通常天井に隠れている梁が現しになることにより、天井が高くなる開放的な空間や、

天井にアクセントの木が入る雰囲気に憧れるのだと思います。

 

しかし最大のメリットは天井の下地、石膏ボード、クロスを省けるための材料代と施工価格を圧倒的に抑えられることにあります。

上手に利用すると、かなり安くなります。

 

・通常の天井

・梁見せ天井

個人の考え方ですが、現在計画中の僕の自邸では火災保険は高くなりますが建築費を抑えられて雰囲気の出る「梁見せ天井」を選択する予定です。

 

 

■梁見せ天井も省令準耐火構造も。

梁見せ天井のデザイン性を優先するか、通常の天井で火災保険の優遇を受けやすくするべきか悩ましいところですが、

「梁見せ天井」と「省令準耐火構造」の両方を選択できる方法もあります。

 

火災保険も安くなりフラット35も利用でき梁の雰囲気も楽しめます。

 

1.梁に石膏ボードを貼り、その上に木を貼る。

2.普通の天井を作り、その下の梁型の化粧木ルーバーを付ける。

 

 

この方法だと「省令準耐火構造」に適合し雰囲気のある天井ができます。

しかしプラスアルファの工事になるので価格は若干上がります。

 

 

 

3つの項目でそれぞれメリットとデメリットがあるので、比較して検討してみてください。

・「省令準耐火構造」→ 標準な家

・「省令準耐火構造ではない梁見せ天井」→ 安く雰囲気のある家

・「梁見せ天井も省令準耐火構造も」→ 標準+雰囲気のある家

どれが自分に合っているのかよく考えてください。

 

ちなみに、省令準耐火構造は建築基準法とは違って完成した時の審査機関による確認はありません。

基準を満たしているかチェックしてくれる第三者がいないのです。

それを良いことに、誤魔化そうと思えは誤魔化せると思って「これくらいなら大丈夫」と曖昧な仕事をしている建築会社もあると噂があります。

怖いですね。

保険ですからしっかりと正しい基準を持っている建築会社を選びましょう。

 

 

笠井啓介


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