建設地 :北海道江別市
用途 :専用住宅
構造 :木造
(リノベーション)
敷地面積:171.90㎡
建築面積: 64.80㎡
延床面積: 80.60㎡
工事費 :2000万円台
写真 :笠井啓介
建築地の江別市文京台は、2,000haを超える自然公園に隣接している。約40年前に札幌市のベッドタウンとして開発されたが、現在は65歳以上の人口が約40%を占めており札幌市近郊で高齢化率が一番高く社会問題となっている。
元は築36年の祖母の家。長らく賃貸していたが老朽化で手直し工費が賃料を上回り売却したとしても二束三文。負の資産となっていた。
古着・旧車・古道具などの古い物に価値を見出す日本人は多いが、古い家に価値を置く人は少ない。大量生産された古い家にも価値を与えたい。昔の日本の家は今では考えられないような良い木材を利用している。良い木材を残し新しい技術を取り入れた「程よくサビれた快適な住宅」を目指すべく新築ではなく、基礎と木材を残したスケルトン改修として2人暮らしの自邸の計画がスタートした。
空間をずらして配置することで各室の居場所を確保。ゆるやかに全体がつながるように建具を減らしワンルームの計画とし1Fと2Fは吹き抜けでつながる。延べ床面積80㎡の小さな家だが窓の配置により縦の奥行を作る。リビングは吹き抜けをまっすぐ伸びる薪ストーブの煙突が象徴的な空間となった。天井の高さと素材を空間ごとに切り替えること伸びやかな空間となり狭さを感じない。2人の趣味である観葉植物とアクアリウム用の棚は造作工事とし一体感を演出。
有効ボードで植物をハンギングできるスペースも確保。空間全体が主役になるように薪ストーブ、観葉植物、アクアリウムのそれぞれの主張のバランスを意識した。既存の無垢材引き戸はハンガー引き戸に変更して再利用。ダイニングテーブルは既存階段の厚み30mm無垢材で大工さんに作ってもらった。天井の表し梁は新築では醸し出せない良い感じにサビれているため手を加えていない。新しい木材のみ着色し古材のサビ感を強調した。
積雪量が毎年5mを超える寒冷地だが暖房は薪ストーブ1台で家全体を暖める計画で、薪ストーブから遠い1Fの部屋には2Fの暖気をダクトで送風し室温を均一にしている。熱貫流率(UA値)は0.37と北海道の平均数値だが早朝外気温が-14度で薪の火が消えていても室温17度を確保している。仕事柄、建築廃木材は手に入るため暖房費0円で生活しており、薪ストーブで料理も楽しんでいる。
高齢化地域に新しい家が1軒できるだけでも周囲の雰囲気がポジティブに変化する。家の周辺は散歩コースになっているため、エントランスに誰でも座れるベンチを設置した。新しいコミュニケーションが生まれ、今後この地域に新しい世代が住むきっかけになればと思っている。